腹筋トレーニングは場所も時間も取らず誰でも行える手軽さ、腰痛予防や健康目的で行う人も多い人気の筋トレです。
ですが、腰痛予防や健康目的で行なっているはずのトレーニングが原因となり、腰を痛めてしまうことがあります。
腰痛が発生する原因は体の歪み(生活習慣)・病気・筋肉性のものなど様々ありますが、この記事では腹筋トレーニングで起こる腰痛(筋肉性)に注目して解説していきます。
腰痛が起こる原因、腰を痛めない腹筋の方法や注意点、腰痛を防止するために鍛える筋肉をまとめてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
腹筋が腰痛を引き起こす理由
本来、腹筋を鍛えると筋肉が支えとなり正しい姿勢が保たれ、歪みが解消されるため、腰への負担が軽くなり腰痛の予防に繋がります。
しかしながら、腹筋をして腰痛が起こる場合は「トレーニングが正しくない」または「上半身の筋力不足」のどちらか、もしくは両方が主な原因と言えるでしょう。
腹筋をする時に使う筋肉といえば、腹直筋(お腹の正面、縦にある筋肉でシックスパックとも呼ばれる)や、腹斜筋(コルセットのように内臓を支えるインナーマッスル)を意識すると思います。
ですが、実は腹筋運動では腰と足の付け根にある筋肉=腸腰筋も活発に使われているのです。
腸腰筋は「大腰筋・腸骨筋・小腰筋」の3つで構成されており、内臓と脊柱の間にある上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉です。
立ち姿勢時に重力から体を守るとともに、主に腰のS字カーブの維持、股関節の屈曲(曲げたり外側に回す)を担い、体を前に倒す(前屈)の働きもあることから、別名で「深腹筋」と呼ばれることもあります。
腹筋トレーニングでは、お腹の筋力が弱いと上半身を持ち上げる時に腸腰筋に負担がかかってしまいます。
また、腹筋は十分あっても腸腰筋に柔軟性がないと腰が前へ引っ張られ反り腰になりやすく、トレーニングフォームが崩れてしまうことで腰を痛めやすくなるのです。
【初心者注意】腰を痛めやすい腹筋トレーニング
ここからご紹介する「腰を痛めやすいトレーニング」は、腹筋を鍛える上では有効な方法ですが、筋トレで得られる効果(お腹の筋肉をつける)以上に、腰への負担が高くなりやすく、腰痛を引き起こしやすいとされています。
特に、運動初心者またはお腹や腰の筋力不足などで反り腰になりやすい方、腰に不安がある方は避けていただきたい種目になるので1つずつ確認していきましょう。
【NG①】シットアップ
シットアップは、仰向けに寝た姿勢で足を伸ばした状態、もしくは膝を立てた状態からお腹の力を使って上半身を持ち上げる筋トレ。
一度はどなたでも経験したことがあると言えるほど、腹筋の中でもポピュラーな種目として知られています。
主に腹直筋を狙ったシットアップですが、脊椎の一部である腰椎(腰骨)の曲げ伸ばしを繰り返すため、近年はヘルニアの原因になるリスクが高い運動と言われています。
【NG②】レッグレイズ
レッグレイズは仰向けに寝た姿勢から揃えた足を上下に持ち上げる筋トレであり、腹直筋下部を効果的に鍛えられます。
腰を常に床につけた正しいフォームで行えば、腰への負荷は低いトレーニングですが、背中から太ももまでの筋力が弱い方が行うと反り腰になりやすく、腰を痛めやすい筋トレとなるので注意が必要です。
腹筋による腰痛を防ぐ3つのポイント
腹筋で腰を痛める主な原因は、腹から腰、足の付け根部分での筋力不足になりますが、ご紹介した「腰への負担が高い種目」を行う以外にも、誤ったトレーニング方法で痛めてしまうことがあります。
トレーニングにより筋力不足が解消しても腰を痛めてしまっては、日常生活にも支障をきたす結果になってしまいますので、腰痛を防いで安全にトレーニングを行う3つのポイントを確認していきましょう。
【腰痛を防ぐポイント】
- 反動をつけない
- 適切な運動強度(回数)で行う
- 正しいフォームで行う
上記3つのポイントは腰痛を防ぐだけではなく、筋トレを行う時に気をつけてほしいポイントとも言えます。
反動をつけて腹筋を行うと、腹筋(鍛えたい部位)以外の筋肉も使用されるので、お腹に負荷がかからず効果が薄くなります。
また、適切な運動強度(回数)は1人1人で異なりますが、筋トレは多くの回数を行うより限界まで行うことの方が重要です。
例えば、100回できる腹筋運動はそれだけ筋肉への負荷が低い、または反動を使ってしまっていることも考えられ、これでは筋力UPや筋肥大を実現するのは難しいでしょう。
腹筋にしっかり負荷をのせたトレーニングを、限界(例えば10回)まで行うほうが、効果的に鍛えられるのです。
基本的に人は楽な動作をしてしまう性質があり、楽な動作はトレーニング効果を減らすだけでなく、体を動かす癖により怪我につながることもあります。
そのため、トレーニングは第一に「正しいフォーム」で行うことが大切であり、初めのうちは回数は気にせず、1回1回腹筋に疲労感や刺激を感じるかを意識して、正確なフォームの習得を目指すと良いでしょう。
【安全に行う】腰に優しい5つの腹筋トレーニング
ここからは、筋トレ初心者の方でも取り組みやすい「腰に優しく痛めない腹筋トレーニング」をご紹介していきます。
一見するとお腹への負荷が低くみえ、このトレーニングで腹筋が鍛えられるか疑問に感じるかもしれませんが、まずは腰から足の付け根を鍛え、徐々に直接的な腹筋トレーニングを取り入れていくことが大切です。
ドローイング
ドローイングは、お腹を凹ませたまま腹式呼吸を行うトレーニングです。
動きがないように思えますが、しっかり行うことで最も深い位置(体の内側)にある、腹横筋を鍛えることができます。
腰や足への負担がないので、腹筋に慣れていない方は一番初めに挑戦してみてはどうでしょうか?
【ドローイングのやり方】
- 仰向けに横になる
- 足を腰幅に開き、膝を立てる
- 鼻から息をすい、お腹を膨らませる
- 口から息を吐きながらお腹を凹ませる
- 凹ませきったら、4秒キープ
- 3〜5を繰り返す
目安回数は1セット10回を2〜3セット。
ポイントは足の位置と、腹筋から力を抜かないことです。
足の位置が遠いと腰が反りやすくなり痛める原因になるので、足は体に近い位置に置きましょう。
また、ドローイング中は常にお腹の筋肉を意識し力を抜かずに行ってください。おへその下に力を入れて息を吐くことで、「しっかりお腹を凹ませる=腹横筋を刺激する」ことができます。
プランク
プランクは自重で負荷をかけ、姿勢を保つことで筋肉を刺激する筋トレであり、体幹トレーニングとして有名なのでご存知の方も多いと思います。
姿勢の維持には特にお腹とお尻の筋肉が使われるため、腹筋群と腸腰筋を同時に鍛えることができます。
【プランクのやり方】
- 四つん這いになり、肘を90度にして肩の真下につく
- 足を揃えて伸ばし、つま先を立てて体を持ち上げる
- 顔は正面に向け、頭からかかとまで体を一直線にする
- この状態で20秒キープ
目安回数は1回20秒を3セット、インターバルは1回ごとに1分以内になります。
プランクは、一直線の姿勢が崩れると腹筋への刺激が肩や腕に逃げてしまうため、お尻を持ち上げない、頭を下に向けない(肩や背中が丸まりやすくなるため)ことを意識してください。
また、力を入れると思わず呼吸を止めてしまいがちなので、呼吸は止めないよう注意し、息を吐く時はお腹を凹ませるように行いましょう。
以下の記事でプランクの正しい方法についても解説しているので、参考にしてください。
ニー・トゥ・チェスト
ニー・トゥ・チェストは鍛えにくい腹直筋下部と腸腰筋を同時に刺激できるトレーニングです。
両足を体に引き寄せる動作で腹筋を刺激するため、腰への負担が少なく、腰が気になる方でも取り組みやすい種目と言えるでしょう。
【ニー・トゥ・チェストのやり方】
- 足を伸ばして、床に座る
- 両肘を後ろに置き、体重をかける(スタートポジション)
- 両足の膝を胸にギリギリまで引き寄せる
- 膝が伸びきるまでゆっくり足を下げて、床ギリギリで止める
- 3・4を繰り返す
目安回数は1セット10回を3セットです。
セットの途中で足を床に置いてしまうと腹筋への負荷が抜けてしまうため、足を下ろした時に踵を床につけないことがポイント。
可能であれば数秒キープすると、より強い負荷がかけられます。
また、腹筋に効かせるためには上半身を動かさないことも大切なので、スタートポジションの時に体がぐらつかず安定して支えられているか、チェックすると良いでしょう。
カールアップ
カールアップは従来の上体起こしと違い、腰を動かさず腹筋を鍛えることから腰痛のリスクが少ないトレーニングとして紹介されることが多い種目です。
お腹を曲げることなく動きがない筋トレに見えますが、しっかり腹筋に刺激が入るので、ぜひ挑戦してみてください。
【カールアップのやり方】
- 仰向けに横になり、片足をたてる
- 両手を腰の下に入れる(スタートポジション)
- 首は動かさず、胸を丸めて上半身を起こす
- ゆっくり元の位置にもどる
- 3・4を繰り返す
目安回数は1セット20回を3〜5セットになります。
カールアップの特徴は腰を動かさない点にあり、あくまでもみぞおちから上を起こす運動のため、上体を起こしきらないように注意しましょう。
また、上体を起こす時に首に強い力が入る方は、手で頭を支えると首への負担が軽減できるので、ご自分に合った方法で試してみてください。
カールアップに慣れてきたら、上体を起こしたまま数秒キープして行うと、より強く腹筋を刺激することができます。
ニートゥーエルボー
肘と膝を近づけて立って行う腹筋、ニートゥーエルボーは主に腹斜筋を刺激できるトレーニング。
筋トレでありながら有酸素運動の要素も持っているので、脂肪燃焼ができダイエット効果も期待できる種目です。
【ニートゥーエルボーのやり方】
- 足を肩幅に開き、背筋を伸ばして立つ
- おへそを覗き込むように、右肘を左膝に近づける
- 手足を元の位置にもどし、反対側も行う
左右交互に30秒間行う、または1セット(左右で1回)10回×3セットが目安回数になります。
ニートゥーエルボーは、手足を動かす時に勢いをつけない、肘と膝を近づけるときは体をしっかり捻る、膝はつねに腰の位置より上にあげることが効果を出すポイントです。
また、バランスが取りにくく次第にフォームが崩れていきやすいので、1回1回フォームを意識するようにしましょう。
なお、腹筋のトレーニングは他にも様々あります。正しく腹筋を鍛えいたい方は、以下の記事も参考にしてください。
腰痛リスクを下げるストレッチ
腹筋は鍛えることで腰回りの負担が軽減されて腰痛予防ができるものの、筋力不足で行う腹筋運動は逆に腰を痛める原因になることをお分かりいただけたと思います。
上記で腰に優しい腹筋をご紹介しましたが、トレーニングの前後にストレッチをすることで、筋トレの効果UPや腰痛のリスクを下げるなど多くのメリットを得ることできますので、詳しい方法をご紹介していきます。
ただし、ストレッチおよびトレーニングの両方とも「痛み」を感じたら、即中止して様子をみてください。
筋肉性の腰痛であれば、一過性のものなので長くても数日で痛みがひきますが、そうでなければ原因は別にあると疑えますので、無理な運動の継続は避けることが大切です。
トレーニング前のストレッチ
トレーニング前のストレッチは、凝り固まった筋肉をあたためてほぐし運動しやすい体を作ります。
筋肉の可動域が広がることで、腰痛だけでなく怪我の防止効果も期待できるので、無理なく体が温まる程度に行うようにします。
【ストレッチの順番】
- 腹筋を伸ばす(うつ伏せになり腕で上体を支える)
- 猫のポーズ(四つん這いで、背中を丸める→反るの繰り返し)
- 横腹を伸ばす(膝立ちから片足を伸ばした方向に体も倒す)
- 腰を捻る(仰向けで片足が体の上を跨ぐ形で捻る)
- お尻を伸ばす(座って片足をたて、立てた足を両腕で掴む)
- 肩周りを解す(両手を上げ、肘を曲げて下す)
トレーニング後のストレッチ
トレーニング後のストレッチには、筋肉の疲労回復を促す効果があります。
筋肉疲労をとることで翌日の筋肉痛やだるさを軽減でき、リラックス効果により安眠の手助けもしてくれます。
【ストレッチの順番】
- もも裏を伸ばす(片膝を曲げ逆の足は前に伸ばす)
- 股関節を伸ばす(片膝立ちになり、足の付け根を伸ばす)
- 肩を伸ばす(右腕を左側に伸ばし、左肘で挟む)
- 腕を伸ばす(両手を頭上にあげ、肘を曲げ片側ずつ体に引き寄せる)
- 背中を伸ばす(正座から体を前に倒し両手を伸ばす)
- 首を伸ばす(首の後ろに両手を添えて下に軽く押す)
- 膝伸ばし(仰向けになり片膝を両手で抱える)
前後どちらのストレッチも、片手片足ずつ行うストレッチは左右両方行ってください。
腰痛を防ぎ腹筋を鍛えるならパーソナルジムがおすすめ
筋トレの中でも腹筋はポピュラーなトレーニングであり、見た目にも効果がわかりやすいのでモチベーションを保ちやすい部位だと思います。
また、トレーニングのバリエーションが豊富なので、腰痛のリスクが少ない種目を選び、無理なくコツコツ継続すれば、腰痛を起こさず鍛えることが可能です。
ただし、腰痛は一度発生すると原因がトレーニング由来のものでも、日常の習慣次第で長引く可能性もあり、生活に支障が出てしまいやすいのが難点。
腰痛を起こさないためには、ご自身に合った適切な種目の選択+回数を行うことが重要ですが、運動に慣れている方でも難しい選択と言えるでしょう。
腹筋を安全に鍛えたいが、腰や筋力不足など不安をお持ちでの方には、個別指導のパーソナルトレーニングをおすすめします。
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