糖質制限に興味をお持ちの方は、同時に「ケトジェニック」という言葉も目にする機会が多いと思います。
ケトジェニックは一番ハードな糖質制限と紹介されることも多く、糖質の摂取量に差はあるものの「糖質を抑える」点で似たダイエットとして認識されているかもしれません。
結論からお伝えするとケトジェニックは糖質制限の一種ですが、糖質制限とは痩せ方の仕組みが異なるダイエット方法です。
糖質制限 カロリー制限も兼ねており、糖質を控えてアンダーカロリーにしつつ血糖値をコントロールする減量方法 ケトジェニック 体のエネルギー代謝を糖から脂肪(ケトン体)に切り替え、脂肪を燃焼させる減量方法
この記事ではケトジェニックと糖質制限の違い、代謝の切り替えで痩せる仕組みや特有のデメリットをわかりやすく解説します。
ダイエットのためにケトジェニックがご自身に必要か、検討にお役立ていただけたら幸いです。
ケトジェニックと糖質制限の違いとは?
ケトジェニックと糖質制限の違いは以下の通りです。
スタンダード糖質制限 | ケトジェニック | |
---|---|---|
代謝の仕方 | 糖代謝 | 脂質代謝 |
1日の糖質摂取量 | 70~100g以下 | 30~50g以下 |
痩せる仕組み | 血糖値コントロールにより脂肪を溜めず徐々に痩せる | 体脂肪を燃焼させて短期集中で痩せる |
どちらも糖質を抑える点と、アンダーカロリー(摂取カロリーより消費カロリーが上回る状態)を守ることは同じです。
ですが、エネルギーを作り出す代謝の方法に違いがあります。(代謝については後述で解説していきます。)
ケトジェニックの1日の糖質摂取量は50g以下であり、素早くケトーシス(脂質代謝に切り替わった状態)になりやすくするために、最初の数日間は極力30gを目安に糖質量を抑える方が良いと言われています。
白米ご飯100g(お茶碗半分)の糖質量は37gですが、糖質はおかずや調味料にも含まれるので、半膳でも主食を食べると50g以下にはできません。
少なくとも白米ご飯を1日1食は食べられる糖質制限に比べ、ケトジェニックでは主食は食べられないことになり、食事や食材、栄養面をしっかり管理する必要があります。
【糖とケトン体】2種類のエネルギー代謝
代謝とは生命を維持するために、食べ物からエネルギーを作り出す働きのことです。
食べ物は胃や小腸で消化され、肝臓に送られてから吸収された後に、血液によって全身にエネルギーとして届けられます。
エネルギーを作る材料には糖質と脂肪があり、通常は糖質のみを材料にした糖代謝が行われ、糖からグルコース(ブドウ糖)というエネルギーが作られます。
グルコースのうち、一定量はグリコーゲンとして肝臓に貯蓄されエネルギー不足の際に使用されますが、18〜24時間で枯渇。
糖質が枯渇すると初めて脂肪からエネルギーを作り出す脂質代謝が行われるようになることで、体内にケトン体が作られ、これを元にエネルギーが生産されます。
ケトン体が体内の血液中に増えると、常に体脂肪が消費されやすい状態になるため短期間での減量が期待できるのです。
ケトジェニックではなく糖代謝だと痩せにくいのか?
ケトジェニックは素早く体脂肪を落としやすくできると説明しましたが、それであれば普段の糖代謝では痩せにくいのか?と思われるかもしれません。
もちろん、糖代謝のままでも減量は可能です。
糖質は太るイメージを持たれていますが、適正な量であればエネルギーの材料で消費されるので、余らせないことが大切です。
糖質を多くとりすぎると血糖値(血液中の糖分量)が急上昇し、下げるためにインスリンが多く分泌されます。
インスリンは余った糖を中性脂肪として蓄える働きも持つため、糖質が多いと太りやすいのは血糖値の急上昇によるインスリンの大量放出が一因と言えるでしょう。
つまり、糖質を摂りすぎずにアンダーカロリーを守れば、代謝を切り替えなくても減量できるのです。
この血糖値コントロールを行う方法が糖質制限となります。
代謝を切り替える!ケトジェニックダイエットの方法
ここからは、代謝をどう切りかえていくのか?ケトジェニックダイエットの方法を確認していきます。
ケトジェニックダイエットの流れ
- 糖質をほぼカットする
- 肝グリコーゲンを枯渇させる(18〜24時間)
- 脂肪を元にケトン体が作られ始める
- ケトーシス状態(脂質代謝)になる
- 体脂肪が燃焼されてやせていく
3~5は糖質カット後に体の中で起こる反応なので、行うことは「糖質をほぼカットする」と「肝グリコーゲンを枯渇させること」です。
ケトジェニックのPFCバランスはタンパク質3・脂質6・炭水化物1であり、糖質は前述したとおり主食は避けておかずからのみとることになります。
糖質摂取量がオーバーしないよう、おかずの糖質についても糖質の多い食材と調味料を避けることが大切です。
食事のうち全体の6割を占める脂質ですが、食品だけで摂ることは難しい(油分が苦手な方は特に)ので、良質な油を野菜や飲み物にから摂ることをおすすめします。
つぎに肝グリコーゲンですが、糖質をとらなければ新たに蓄えられることがないので18~24時間で枯渇します。
枯渇を待つのも良いですが、筋トレを行いグリコーゲンを積極的に消費させ素早くケトーシス状態に持っていくほうが効率的と言えるでしょう。
3~5のケトン体が生成されケトーシス状態に入り体脂肪が消費されはじめる段階には個人差があり、早い方では2日、遅い方は2週間以上かかるケースもあります。
ケトーシスになっているか確認する方法
体からケトン体が出ているかを確認する方法はいくつかあります。
- 専門の判定紙(ケトスティック)
- ブレスチェッカー
- 口臭の変化(甘い・甘酸っぱい匂いなど)
- 食欲の減退(食欲が暴走しない、あまり感じられなくなった)
ほかにも軽い頭痛や倦怠感を感じる、喉の渇きを覚える、体臭変化などでケトーシスになっていると判断することもあります。
ただし、これらの症状を感じない方もいるので、症状がない=ケトーシスになっていないとは言い切れません。
ケトーシスか確認せずに続けると、糖新生(糖質不足により筋肉を分解してエネルギーを作り出す働き)により代謝が落ちる、いわゆる筋肉ダイエットになってしまうことも考えられます。
ケトジェニックの成功は代謝の切り替えを把握することが必要なため、ケトーシスになっているかはケトスティックとブレスチェッカーで確認した方が良いでしょう。
ケトジェニックダイエットに取り組むうえで気をつけてほしい4つのポイント
ケトジェニック中は以下4つに気をつけて行ってください。
- 水分と食物繊維をしっかり摂る
- 良質な油を選ぶ
- 定期的に筋トレをする
- 終了期間を決めておく
水分と食物繊維をしっかり摂る
水分と食物繊維を多く含む炭水化物を取らないため、ケトジェニック中は脱水やお腹の不調がおこりやすい状態です。
女性は1.5ℓ以上・男性は2ℓ以上の水分を摂るようにし、食物繊維は野菜だけでなくキノコや海藻からも積極的に摂取しましょう。
良質な油を選ぶ
ケトジェニックでは脂質をエネルギー源にするため、良質な油(主に植物や魚に含まれている「不飽和脂肪酸」)を意識的にとる必要があります。
特に、脂肪として蓄積されにくくエネルギーへの活用がスムーズなMTCオイル(中鎖脂肪酸100%の油)がおすすめ。
ほぼ無味無臭で熱に弱い性質のオイルなので、加熱せずに味噌汁や飲み物、サラダなどにくわえて食べるようにしましょう。
定期的に筋トレをする
体がもつ「使わない筋肉を減らしていく」働きにより、筋肉量が減ると代謝も減り痩せにくい体になっていきます。
ケトジェニックに限らず減量中の筋トレは「筋肉量を保ち代謝を維持」することが目的であり、定期的に行うことが肝心です。
減量前に筋トレを行なっていた方は、そのメニューを継続してください。
特にメニューがない方は、大きな筋肉(上半身は大胸筋と広背筋、下半身は全て)を狙って鍛える、効率的な筋トレを意識してメニューを考えると良いでしょう。
また、より減量を進めるためにはウォーキングやランニングなど、脂肪燃焼を促す有酸素運動も合わせて行うことをおすすめします。
以下の記事ではケトジェニックダイエット中の筋トレについて解説していますので、参考にしてください。
※公開後に追加
終了期間を決めておく
明確な目的や期間を設定せずに行うダイエットは失敗しやすく、ケトジェニックの長期的な実施は体調不良のリスクを高めることがあります。
そのため、ケトジェニックは最長で3ヶ月が目安です。
あらかじめ目標とする体重や体脂肪を決めておき、到達したら3ヶ月未満でもその時点でケトジェニックを終了してください。
ケトジェニックのメリット&デメリット
減量効果の高さから、認知が広がっているケトジェニックですが、多くのメリットの他デメリットもありますので、始める前に確認していきましょう。
3つのメリット
主なメリットは以下の通りです。
- 短期間で効果的に痩せられる
- 満腹になるまで食べられる
- 血糖値が安定する
糖質が摂れない厳しさはありますが、しっかり食べることが必要なのでオーバーカロリーにならなければ満腹まで食べても大丈夫です。
また、血糖値が安定することで空腹を感じにくくなる特徴もあり、ダイエットの失敗原因になる一度に大量に食べてしまう「どか喰い」が起こりにくいことも良い点と言えます。
4つのデメリット
効果的なケトジェニックですが、もちろんデメリットもいくつかあげられます。
- 口臭や体臭が特有の匂いに変化する
- 体調を崩すリスクがある
- 食事の管理が難しい
- リバウンドしやすい
ケトジェニック中に起きる口臭や体臭の変化は、ケトン体に含まれるアセトン(甘い匂いを持つ)によるものであり、ケトン臭とも呼ばれます。
臭いが気になる方は筋トレで体内のケトン体を使い切る、半身浴や水を多くのみ汗や尿からアセトンを積極的に排出させるなど臭いを和らげる対策を試してみましょう。
代謝が切り替わる過程で起こりやすい体調不良には、だるさや頭痛、吐き気、思考力の低下など低血糖によるさまざまな症状があり、完全に代謝が切り替わった後は症状が治まっていくとされています。
そのため、さまざまな症状が2週間以上続く場合はケトーシスにならずケトジェニックが失敗していると思われますので、無理に続けず専門家の指導を仰いでください。
また、ケトジェニックの糖質摂取量を守るためには炭水化物はもとより、糖質の多い食材や調味料も避けるといった細かい管理が必要です。
食材や味付けにどうしても制限がでてくるため、料理が苦手、細かいことが苦手な方はストレスを感じやすいかもしれません。
リバウンドについては、ケトジェニック終了後にいきなり糖質摂取量を増やすと起こりやすくなります。
極端な体重増加を防止するためにも、ケトジェニック終了後はスタンダード糖質制限に移行し、時間をかけて糖質摂取量を徐々に増やすようにしましょう。
ケトジェニックと糖質制限はどちらを選ぶ?
ケトジェニックと糖質制限は似ていますが、どちらを選ぶべきか?を考え始めると悩むと思います。
先に記載した「糖代謝だと痩せにくいのか?」の通り、代謝を切り替えなくてもダイエットは十分可能です。
そのため「時間的制約がある・メタボ治療(医師の指導)や特定の目的」がある方は短期間で行えるケトジェニックを。
それ以外の方は糖質制限からはじめ、制限に慣れたうえで必要があればケトジェニックを行なっていくことをおすすめします。
1ヶ月で落として良い(安全)とされる重さは、現在の体重の5%以内と言われています。
ダイエット後の体型維持を楽にするためにも、短期間に急激に体重を落とすことは必要性がない限りあまり良いとは言えません。
また、食の好みによって糖質の制限は向き不向きがあります。
ダイエットに緊急性がない場合、まずは緩めの糖質制限から始めて合う合わないを確認してから、ケトジェニックを検討してみてください。
糖質制限に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
正しい食事制限を知るならパーソナルジムへ
この記事ではケトジェニックと糖質制限の違いについて、代謝の切り替えをメインに解説してきました。
主食よりおかずの方が好み、たくさん食べて痩せたい方には、どちらも向いているダイエット方法と言えるでしょう。
ケトジェニックについては代謝の仕組みを切り替えるので、少なからず体に負担がかかります。
このダイエット方法がご自身に必要なのか?を考えるとともに、専門家の指導のもとに始める方が安全かつ健康的に行えるでしょう。
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