糖質制限の基本はPFC(タンパク質・脂質・炭水化物)を3:6:1の割合でとりつつ、アンダーカロリー(摂取カロリー<消費カロリーの状態)を保つことです。
ただし、アンダーカロリーを意識するあまり、糖質と同時に脂質の摂取も控えてしまっている方は、健康リスクが高い危険なダイエットになってしまっていると考えられます。
糖質と脂質を同時に控えた状態で起こる減量は、ダイエットではなく栄養失調や筋肉の減少による、やつれた状態と言えるでしょう。
過去に脂質制限でのダイエットに挑戦したことがある方は、高カロリーで太るイメージが根強い脂質をとることに抵抗感があるかもしれません。
そこでこの記事では、糖質制限中において脂質の摂取がなぜ重要か?糖質制限と脂質制限の違い、体に必要なとって良い油の種類など詳しく解説していきます。
まず、糖質制限中の脂質に対する結論を伝えると、以下の通りです。
- 糖質制限中は総摂取カロリーのうち6割を脂質から摂取する
- 脂質の種類を意識する
- 糖質制限と脂質制限を同時には行わない
糖質制限をされている方は、脂質を恐れずにアンダーカロリーの範囲で美味しく摂取していきましょう。
糖質制限と脂質制限は何が違うのか?
一般的に糖質や脂質(または両方)を取りすぎ余った栄養が、脂肪酸から最終的に中性脂肪に変わり、体に蓄積されることが太る原因とされています。
そのため、太る原因となる「糖質」か「脂質」のどちらの摂取量を控えるかが、糖質制限と脂質制限の違いです。
簡単な分け方をすると、糖質制限は炭水化物(主に主食)を控える、脂質制限は調理方法を工夫し油分をカットしたり食事量自体を減らすダイエット方法となります。
それぞれ効果のあるダイエット方法ですが、体重の落ち方や、個人の食事の嗜好による継続のしやすさなどに違いがあり、向き不向きがあるといえるでしょう。
糖質とは?糖質制限の痩せ方
糖質とは、エネルギーを生産する3大栄養素(PFC)のうち、体内で一番早くエネルギーとして利用される栄養素です。
炭水化物(お米、パン、パスタ、うどんなどの主食)をメインに、根菜、果物、調味料(ケチャップやみりん、ソースなど)に多く含まれます。
糖質が消化吸収されると、血糖値(血液中の糖分濃度)が上がり、インスリンが放出されます。
インスリンは血液中の糖分をエネルギーに利用するために取り込む働きと同時に、余分な糖分を脂肪に変える作用があるので、糖質過多だと太る原因になってしまうのです。
そのため、糖質制限は主に主食を減らし、おかず(タンパク質と脂質)を多く取るダイエット方法となります。
ゆるい制限(ローカーボ)の場合は、低糖質食品に置き換えるなどで糖質を余らせない程度に摂り、脂肪の蓄積を防ぐので減量効果は緩やかです。
一番厳密な制限(ケトジェニック)は、主食を含め糖質の高い食品全般に気を配り、糖質を必要最低限にする方法です。
体から糖質を枯渇させることで、体のエネルギー代謝が糖質から脂質に切り替わり体脂肪が消費されるため、減量効果は高くしっかり痩せることができます。
ただし、はじめてケトジェニックを行う方は、体調面での安全性を考慮して医師や専門家(有資格者など)の指導を受けて取り組むようにしてください。
脂質とは?脂質制限の痩せ方
脂質もエネルギーを生産する栄養素の1つであり、大まかに体内で合成できる「飽和脂肪酸」と、できない「不飽和脂肪酸」の2つに分けられます。
脂質制限とは主食やタンパク質の制限はなく、脂質の高い食材(バターや脂身が多い肉類)を避ける、または調理法を工夫(蒸す、煮る、脂身を取り除くなど)して脂質を抑えるダイエット方法です。
タンパク質、糖質が1gあたり4kcalなのに対して、脂質は1gあたり9kcalと高カロリーなため、脂質を減らすことで効率的に総摂取カロリーを抑えることができます。
糖質制限と脂質制限の特徴と向き不向き
糖質制限と脂質制限、どちらのダイエット方法を選んでも正しく行えば減量することができます。
【糖質制限向きの人】
糖質制限は主食を減らしても苦にならない=普段から主食よりおかずが好きな方、食事量は減らさずしっかり食べて痩せたい方に向いています。
糖質制限はオーバーカロリーにならなければ、満腹まで食べてもOKなため空腹感を感じにくい、行う期間も3ヶ月が目安なので「減量効果が高く期間が短い」という特徴があります。
他にも、食事量への満足度が高いので、余分な間食などの食べ過ぎも予防できるでしょう。
【脂質制限向きの人】
脂質制限の良い点は、やはり主食を制限しないことであり、主食をしっかり食べて痩せたい方は脂質制限の方がストレスを感じにくいと思います。
ネックは、調理法の工夫(脂身のカットや蒸したり煮たりで食材の油を落とす)や、カロリー計算など手間がかかることです。
それらを行わず、食事量全体減らしてカロリーを抑える人もいますが、極端に行うと空腹感を感じやすく継続が難しくなるでしょう。
いずれも食事に関わることであり、毎食ごとにストレスがかかるようでは長続きしませんし、健康面と精神面にも良くなく結果につながりません。
どちらの方がより自分の食習慣・思考に合っているかを考えてから始めることが大切です。
また、両方のダイエット方法に言えるのは、体は必ず状況に対応していくため「慣れ(停滞期)」が発生するということ。
ご存知の方も多いと思いますが、停滞期がくると同じ方法を継続しても当初ほどの減量効果が現れなくなります。
それにより、長期的にダイエットに取り組む方は糖質制限と脂質制限を交互に行い「体の慣れ」をできるだけ防ぐと良いでしょう。
糖質制限には脂質が必要不可欠!
ここからは、糖質制限をおこなっていることを前提に「糖質制限にはなぜ脂質が必要」について解説してきます。
3大栄養素を消化・吸収してエネルギーとして利用される「代謝」には糖質→タンパク質→脂質の順番があり、糖質が不足すると次はタンパク質(筋肉)を分解してエネルギーをつくり始めます。
そのため、タンパク質を多く摂ることも間違っていません。
ですが、タンパク質は主に全身をつくる材料として利用されるため、エネルギーの生産は非効率であり量もわずかです。
タンパク質だけでは体を動かすエネルギーを賄えないので、脂質からもエネルギーが作られるようになる=代謝の切り替えが起こることで痩せていきます。
つまり、糖質制限中に脂質も不足すると、エネルギーを作るため筋肉の分解が進み、筋力の減少による基礎代謝の低下がおこり、痩せにくくなってしまうのです。
また、痩せにくくなる以上に、栄養失調になり日々の生活に影響がでることもあるので、糖質制限中はエネルギー源として脂質をしっかりとるようにしてください。
1日あたりにとる脂質の目安
糖質制限中は脂質を多くとるとは言え、必要な量が分からないままカロリーの高い脂質を増やすと、オーバーカロリーになりやすい点に注意しなければいけません。
必要なエネルギーは体重によって変わるため、ダイエットでは「標準体重で1日に必要な消費エネルギー」の把握が大切です。
必要なエネルギーが分かれば、そこから炭水化物(1割)とタンパク質(3割)を引くことで、摂取して良い脂質の量を把握できます。
計算の流れは以下の通りなので、参考として例をもとに計算していきましょう。
例:28歳男性、身長170cm/体重75kg 、在宅デスクワーク中心の生活
計算①:標準体重を知る(計算式:身長の2乗×22)
身長170cmの場合、標準体重は約63.6kgです。
標準より11.4kg重いため、標準体重で必要とする(=消費される)エネルギーをとれば、自然にアンダーカロリーになり痩せていきます。
計算②:1日に消費するエネルギーを知る(計算式:基礎代謝×係数)
まず基礎代謝の計算し、身体活動レベルに応じた係数をかけていきます。
基礎代謝の計算式(国立健康・栄養研究所式)
男性(0.0481×体重+0.0234×身長-0.0138×年齢-0.4235)×1000/4.186
女性(0.0481×体重+0.0234×身長-0.0138×年齢-0.9708)×1000/4.186
計算に使う「係数」とは日常生活でどの程度体を動かしているかで3段階に分けられています。
身体活動レベル【男女共通:18歳以上70歳以下()内は係数】 | |
---|---|
低い(1.50) | 1日の大部分を座って過ごす、通勤・運動・歩行などが少なく静的な生活 |
ふつう(1.75) | デスクワーク中心だが、職場や買い物での移動、通勤・立ち作業や軽いスポーツで体を動かす生活 |
高い(2.00) | 日常的に移動や立ち仕事をおこなっている、活発な運動習慣をもっている生活 |
標準体重約63.6kgだと基礎代謝は1488kcalとなり、在宅デスクワークのため活動レベルは「低い」ものとします。
例:1488 × 1.50 = 2232kcalが1日の適正な消費エネルギー
計算③:1日にとって良い資質の量を確認する
それぞれ必要な量についてはカロリーのみだと料理する際に分かりにくいため、グラムも参考に記載していきます。
- 炭水化物1割=280kcal(70g×4kcal)
- タンパク質3割=約670kcal(167.5g×4kcal)
- 脂質6割=約1339kcal(148.7g×9kcal)
炭水化物については本来892kcal(223g)が1割ですが、ローカーボの場合1日の糖質量は70〜130gまでとしているため、70gで計算しています。
また、ごはん100gの糖質量が35.6gであるように、炭水化物は糖質と食物繊維で構成されているので、炭水化物の重さ=糖質量ではありません。
※この記事では計算例の参考として分かりやすくするために、1グラムに対してそのままカロリーをかけて算出した結果、合計の数字が適正な消費エネルギーをやや上回っていますことをご承知ください。
脂質の役割を知り良い油を取り入れよう
脂質はエネルギー源(脂肪として貯蓄しておく)以外にも、様々な働きがあります。
- 内臓の体温調節と保護
- 身体の消化吸収を助ける
- ホルモンを作る材料
もちろん過剰摂取は肥満につながりますが、極端に不足しても「疲れやすくなる・体の抵抗力が落ちる・肌や髪の毛の状態が悪くなる」など多くの問題が起こります。
太るイメージが定着している脂質ですが、良質な油を適切な量とる方がダイエット中でも健康的な体を維持できるため、良い油を選んでしっかりとるようにしましょう。
脂質の種類
脂質とは?で前述したとおり、脂質は体内で合成できる「飽和脂肪酸」と、できない「不飽和脂肪酸」の2つに分けられます。
不飽和脂肪酸はさらにオメガ3・6・9の3つに分けられますが、加熱に強い油、弱い油などそれぞれ性質が異なるので、使い分けてとるようにしてください。
オメガ3(α-リノレン酸:生活習慣病の予防効果が期待される)
亜麻仁油やえごま油、青魚に多く含まれています。
熱に弱く成分が壊れやすいためドレッシングや味噌汁など、出来上がった料理に「かける」食べ方で積極的に取るのがおすすめです。
オメガ6(リノール酸:コレステロールの低下が見込まれる)
コーン油や大豆油、グレープシードオイルに多く含まれています。
加熱にも対応している油であり、加工食品に使用されやすい油なです。
積極的に取らなくても自然に口にしているケースが多いので取り過ぎに注意しましょう。
オメガ9(オレイン酸:悪玉コレステロールの濃度を下げる効果が期待される)
オリーブオイルやなたね油、べに花油に多く含まれています。
熱に強く成分が壊れにくいので揚げ物など加熱調理に向いている脂質です。
不飽和脂肪酸ですが、体内でも合成できる油なので取り過ぎに注意しましょう。
MCTオイル(糖質制限でおすすめの中鎖脂肪酸100%の油)
体に脂肪として蓄積されにくく、スムーズにエネルギーとして利用される。
熱に弱いので、オメガ3と同じく「かける」食べ方で取るようのがおすすめ。
健康的に痩せつつ知識を得るならパーソナルジムがおすすめ
この記事では糖質制限を前提に、脂質制限との違いや脂質の種類、必要な理由などを詳しく解説してきました。
脂質は高カロリーですが、糖質制限中においてはエネルギー源にするために、しっかり摂ることが大切だということをお伝えできていれば幸いです。
少食の方や油が重たく感じる方など、もし食品(おかず)からたくさんとるのが難しければ、コーヒーに足したり、サラダのドレッシングなどでとるようにするのも良いでしょう。
食事は1日3回とるのが基本であり、毎日続くため組み合わせや食材選びに悩むことが強いストレスになると、継続するのが難しくなりがちです。
そこで、栄養的な側面から食事をどう選んだいいのか迷う方は、一度プロに相談してみてはどうでしょうか?
パーソナルジムの利点はやはり、1人1人に合わせたプログラムやアドバイスにより、ご自身に合った食事や体についての知識を身につけつつ、健康的に痩せられることです。
当ELEMENTジムはオプションで食事指導をご用意しておりますので、まずは初回体験トレーニングをお試しください。
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